職人の時代。
その昔、
職人と言えば
自分のテリトリーと言えるその筋では
万能であることが美徳とされた。
自分では手にも負えないのに
できると言い、
納得のできるものは自慢げに、
納得のできないは虚勢を張って
客に渡したもんだ。
客先も
それを知ってか知らずか
『さすが××さん、良い腕持ってんな。』などと
愉しんだものだった。
応用の利く腕、技術、業。
人から繰り出されることにより生まれる自然な温もり。
質感。
業師。
萬屋/万屋(よろずや)という称号はその際たるものだろう。
今この世の中、
同じようなものであるのに
互換性が無い、
口の形が違うのでつながらない、
と言うことが堂々とまかり通るようになった。
求める消費者も
訳知り顔で容認し、
周囲に知識のお裾分けをすると同時に
その物体の広告塔と化していることに気付いていない。
できるはずなのに、
できないと言うこと許す時代。
甘やかす時代。
できないと言う言葉の背後に
金銭の影がちらつく現代。
木材の温もりが伝わる黄土色の土壁よりも、
うちっぱなしと称した何の温もりも感じさせない灰色の、
どう見ても手抜きとしか思えない灰色の壁を
おしゃれで落ちつくと評する現代。
時代はどうあれ、
私は絵を手で描いてゆく。
コンピュータグラフィックには頼らない。
興味が無い。
つまらない。
もったいない。
職人気質と
体温が生きにくい時代。
だからこそ、
職人が生き残れる時代。
そういうことなんだな。
【BGM…NEAL HEFTI/Harlow(original soundtrack)
DAVE MACKAY & VICKY HAMILTON/Dave Mackay & Vicky Hamilton
ARCADIA/So Red The Rose(special edition)】